質 疑 応答

――  現内閣をどう思っていられますか。

中曽根  私は、森君は、わりあい良くやっていると思う。だけど運が悪いと思うね。出だしを、あのような「神の国発言」とか、何とかというので、躓いた。それで、ジャーナリズムとの関係もあまり上手くいかず、それが尾を引いて、ずっと今まで来ていますね。その上に、愛媛丸の事件が起きた。こういう事件がなければ、彼も、色々言葉を慎んできているようだからね。まず、善人だと。それから、図々しいと。それから、体が健康だと。外国へバンバン行ってきても疲れて見えない。わりあいに、そういう意味の根性があると思う。
 そのような面で、こういう事件が起きなかったら、支持率は三十%以上に伸びただろうと思いますよ。ただ、不幸にしてこういう事件が色々起きたので、支持率が低迷している。本人自身は、やはり、善人で図々しさというのは頼もしいところがあると見ているが、甚だ残念な状態だろう。しかし、参議院選前、みんなでそういう彼の良いところを伸ばしてやるようにして、悪戯に党を批判したり、執行部や中枢部を論難したりするようなことは、あまり好ましくないと、私は思います。
 人間の質というものを見てみると、新聞で揶揄されるような、また、素質がどうだとかと言われるような問題はない。ただ、運が悪いことは言われる。そう私は思います。ともかく、善人で図々しいという点は、みんな認めるのではないですか。政治家は図々しくなければ駄目ですよ。  

――  じゃあ、指名していただいたので。今に関連して、本当に、森さん、体力もあり、国会の本会議の答弁等でもしっかりやっておられますし、やはり、今、中曽根先生言われたように、今、本当に文明病を克服して、国民の協力を得て、これを直していかなきゃいかんという時期に、なかなか政治主導というか、特に先導役たる森総理が、本当に一生懸命やっていても、それが国民に伝わらないというか、これをどうやって克服する、思い切った人事といってもあれですが、やっぱり先生の言われるように、本当にマスコミなり、もっと国民の中に飛び込んで、誠意を示すという態度で、本当に飛び込んでいくしかないのか。そのあたりは、当面どうやればあれなのかな。今日あたり、基本問題の、ああいうところでも、また何かつまらん揚げ足取りみたいな、もっと国家基本に関する議論がなされるということは、大変重要なんですが、そのあたりが恐らく、そういう形にならないんじゃないかなと。どうやったらいいのかな、という点をもうちょっとブレークダウンしてお話いただきたい。  

中曽根  できたら、参議院選前に、さっき行ったように、政治のオペレーションをやる必要がある。そう思います。それで、あまり目前の臨床的なことに党員がやきもきしないで、それで今言ったような、二十一世紀の根っ子をつくっていく。そういう深い、しかも愛国的な考えに立って、国民に堂々と話をし、訴える。二十一世紀の日本の将来は、みんな、我々の子供や子孫の時代、日本の歴史に関係する問題なので、今、一自民党とか、一派閥を考えているときではないのです。だから、そういう気持ちを国民に訴えて、そして、我々はこういう気持ちをもってやっているのだ。不徳の致すところで、みなさん方には色々誤解もあったり、叱られていますが、そういうのはよく身にしみて、考えてやりますと。
 しかし、こういう気持ちでやっているのだということは理解してください、と言って、そういう国の運命を考えて、しかも、長い将来を考えてやっているということが国民に浸透していけば、私は、変わっていくだろうと思います。今は、テクニックでものを処せる時代ではないのです。やはり、誠実に一つ一つ積み上げていく以外ないと思います。  

――  今のお話で、当面、中曽根総理が考えられておるような、我々も考えておるような、参議院選挙後に、保守的なものを中心として再編成するにしても、この軸というもの、これは参議院選挙を乗り切らないと、それによって大勝とは言わないにしても、相当の戦いをしないと、そういうことが実現しないと思うんですね。そういう意味で、今、おっしゃったオペレーションと。国民に対して、こう変わったということを口でなく、やっぱり口で言っても、言葉で言っても通じる、今、世の中でないわけですね。そういう意味で、体制そのものを、保守の党の中の色々なシステムを、変えて、そして訴えていくということを、再議院選挙前にやらなかったら、私は遅いと、こういうふうに思うんです。  

中曽根  それはそうです。ですから、連休前だね、連休前ぐらいに色々なことを考えて、みんなでやったらいいと思います。  

――  私も同じことなんですが、中長期的な問題は例えば、具体的に、参議院選挙でテーマにしようといたしましても、国民の側に聞く耳がないと。いかに重要なことであり、長期的には必要な、日本人として、あるいは日本の国家としての必要性を痛感しても、自民党が言うのでは、というような、そういう拒絶反応が、仮にあれば、これは、せっかく良いものを出しても、それが生きてこないという可能性がありますね。そこで、先ほど総理からお話がありました、オペレーションの中に、目を見張るような人事というお話がありましたけど、具体的には、ちょっとメディアの方がいるので聞きにくいのですけど、どういうことがあるんでしょうか。  

中曽根  みんなで考えてください。  

石渡  今日は中曽根総理にお話うかがって、冷戦後の政治全体が果たすべき役割というものを果たしてきていないんではないかと。冷戦終結後の。私は、10年来そのことをずっと考えてきました。一体、自由民主党が保守合同を果たしたあと、このままの体制で今の時代の要請に応えることが、基本的にまずできるのかということを非常に思うんです。私は、憲法の問題を考えても、自由民主党が二つの大きな勢力を、自由民主党そのものが憲法を軸に作り上げていかないと、今の国民の期待を、やれ野党のどこかが吸収をしていって、そして、この冷戦後の多様化した国際的なディマンドと国内的なディマンドに応えて、よりディテールなものを国民が求めるということに、自由民主党が今の体制の中で、冷戦後もやっていくというのは、非常に僕は難しいような気がいたします。
 ドラスティックな考え方で、政策にしても、人事にしても、打ち出すにしても、本当に変えるべきところは、変えられないんじゃないか、という気が、非常にそういう意味で、閉塞感があります。そのへんは、中曽根総理、一歩踏み込んで、どのようなお考えをお持ちか。  

中曽根  国民は、非常に愛国心があるのです。その愛国心に訴えるような話し方とか、自分の決意とか、そういう人間のそのものが理解されたら、みんな投票しますよ。今、自民党が人気が悪いといったって、人気が悪いのはいつだってみんな、政党というのはそう良くはないのでね。民主党だって、支持率上がってはいない。自民党がこんなに悪いなら、民主党はもっと上がっていいはずだけど、上がってないでしょう。国民全体が政治に対する不信感、政治家に対する不信感をもっているのですよ。これは自民党だけではなく、民主党にだって、他の党にも持っているわけですよ。
 しかし、本当に誰が愛国者であり、誰が日本の運命を支えて一生懸命やってくれるのか、それが解ってくれば、目先の色々な問題を乗り越えて、力が出てきます。問題は、そういう問題だろうと私は思います。例えばこの前、江沢民さんが来たときに、小渕君が謝罪を文書にしなかったでしょう。あれでみんないい気分になったでしょ。ああいう一つの例があるね。それは。やはり、愛国心に訴えたのです。そういう色々なことを色々な面で考えてやればいいのです。  

司会  それでは、中曽根総理、どうもありがとうございました。これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。  

中曽根  どうも失礼しました。 (終了) 



(本文は、2001年 2月14日(水)、参議院新世紀政策研究会での講演です。)
  21世紀、日本の進路