2005年 1月 20日   中曽根 康弘

世界平和研究所憲法改正試案の特色

一.前文は、歴史的文化的存在である日本の二十一世紀を見通した国家像を強く打ち出し、全文を書き直した。

二.第一条で、天皇の地位を国民主権下の象徴的元首と規定し、第二条以下に国民主権の条項を定め、第一章として国民主権の章を新設した。

三.現行第九条について、第一項の戦争放棄の条項を現状のままとし、引き続き平和の理念を尊重するとともに、新しい第二項において自衛のための防衛軍を創設した。また、国際協力活動への参加を可能とし、その際の武力行使も国会承認の下に認めた。

四.国民の権利義務の章で、家庭の条項と新しい人権を規定し、国民に国の平和と独立を守る責務を認めた。

五.国会については、衆参両議院の職責を衆議院優位の下に特化し、国民主権の章に政党条項も挿入した。

六.内閣条項に「総選挙は衆議院議員選出と内閣総理大臣推挙のために行われる」と規定し、首相公選制に近い議院内閣制を目指した。

七.また、行政権を内閣総理大臣に専属させ、章名も内閣総理大臣の章に改めたほか、国民投票提起を可能とする等首相のリーダーシップを強化し、緊急事態対応も具体的精細に規定した。

八.裁判所については、憲法裁判所を創設し、裁判官の権能、任命方法等により、最高裁判所より上位の性格をもたせた。

九.財政については、健全財政維持を規定し、また継続費を認めた。

十.憲法改正について、国会の二分の一以上による発議とし、国民投票を義務付けた。

十一.最高法規として、憲法が条約より上位にあることを明定した。




憲法改正試案について
 今回、世界平和研究所では今後の憲法改正論議に向けて、日本国憲法全体について議論を行い、全面改正案を策定した。その特色としては
 
@  日本の国家像を提唱
 現行憲法の前文に日本の独自性が欠けている点を踏まえ、歴史的文化的存在である日本の二十一世紀を見通した国家像を提唱した前文に書き改めた。また、国民主権国家であることを強調するため、第一章に国民主権の章を新設するとともに、日本独自のものとして、第一条には象徴的元首たる天皇の地位を規定した。
A  実質的首相公選制の導入と首相のリーダーシップの強化
 衆議院選挙を首相選出のための選挙と位置づけ、国民が自ら首相候補を選択することができるようにした。
首相に行政権限を専属させたほか、法案の国民投票付託を可能とする等、首相のリーダーシップを憲法上強化した。
B 自衛隊を防衛軍に
 戦争放棄の条項である第九条1項はそのままとし、引き続き平和の理念を尊重するとともに、自衛のための防衛軍を創設した。また、昨今の自衛隊の活動への国民的受容及び国際的な責務も踏まえ、国際平和、人道支援等のための国際協力活動への防衛軍の参加も明記し、その際の武力行使についても国会承認のもとに可能とした。
C  その他改正点
 国民主権の実質化に向け、選挙の責務、政党条項、国の説明責任を定めた。
 人権規定については、人権の相互性、外国人の人権保障、家庭の条項、国の平和と独立を守る責務を定め、人格権・環境権等新しい人権の規定の追加等を行った。
 統治の分野においては、国会の機能として行政監視機能を強化、衆議院の優位性と参議院の独自性を強めた二院制の維持、憲法裁判所の創設等を行った。
 また、緊急事態条項の新設、健全財政維持原則や地方自治の原則の確認、改正手続きの簡素化等を行った。




 なぜ憲法改正をするか ── 憲法改正試案の発表にあたって

 わが国は現在の日本国憲法の下に、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という三原則を中心に、敗戦の結果とはいえ、歴史的大変革を行った。その変革は国民に支持され、国際環境からも受け入れられてきた。
 しかし近来、冷戦の終結とともに世界が米ソ対立の体系依存から脱却して、多元的価値重視の国際情勢に変化するとともに、日本国民の意識もこの現実に対応して変化した。国としての尊厳の尊重、国際的貢献や責任への自覚等が高まり、自衛隊の平和維持・民生安定のための海外派遣が支持され、憲法改正も世論調査では国民の六十五%が改正に賛成(二〇〇四年三月、読売新聞調査)という結果が現出してきた。これは他面において、現行憲法は約六十年の施行経験を経て、内政・外交・安全保障等の分野において、激しい変化に対応できない点が露呈されていることへの自覚にもよるものである。
 日本国内において二十一世紀を展望すれば、少子高齢化、新しい科学技術の発展、経済や社会構成の顕著な変化が予想され、国際的にも日本の経済発展や国力充実とともに日本への期待が高まることにより、現在の憲法が日本の国内態勢の整備と国際的発展を制約する要因ともなる危惧が出てきた。また他面、現在の憲法は、占領下、占領軍の指導によって作成された経緯から見て、国民投票を通じて自主憲法を制定する意欲も強くなってきている。このような状況をもとに、世界平和研究所としても望ましい憲法改正の方向を明示し、憲法改正論議に対する国民的理解と関心を高めることに資するよう念願している。
 今回の提案は、明治憲法ならびに現行昭和憲法の歴史的に果たした役割を想起しつつ、まず前文において歴史的・文化的存在である日本の二十一世紀を見通した国家像を打ち出し、日本の政治構造、基本的人権や責務、安全保障、国際平和の活動への対応等を、法治主義を徹底しつつ抜本的に改正しようとするものである。
 二十世紀は人類史上、悲劇の世紀と記憶されるべきでものであった。二度の世界大戦、独立闘争、民族浄化の名のもとの大量虐殺等が行われたがゆえに、この世紀において世界の国民はひたすらに平和を念願することとなった。しかし二十一世紀は、このような大戦や虐殺が繰返されるようなことがあってはならず、人類全体の価値を創造する積極的な時代であって欲しいと念願している。そのために世界中の国々は二十一世紀を文化の世紀たらしめんとして努力することを望みたい。よって、日本は二十世紀には経済国家と言われたが、二十一世紀は教育文化国家へ前進していくべきであると考え、今回の憲法改正試案においてもそのような性格を打ち出しているものである。
( 以  上 )




憲法改正試案の概要

日本国家全体の姿や精神を表明した前文に
 日本が長年独自の文化と固有の民族生活を形成し発展してきたという歴史を踏まえ、歴史的文化的存在である日本の二十一世紀を見通した国家像として、自由・民主・人権・平和の尊重を基本とした国家体制を堅持した上で、教育や文化の重要性を強調し、国際平和と世界文化の創生への寄与等を日本の独自性として提唱した。

元首としての天皇の地位を第一条で規定
 第一条に天皇の地位を規定することで、憲法の最初の一条に日の独自性を打ち出した。天皇は現在においても外交使節の接受を行い、外国においては元首として扱われていることも考え、伝統的・歴史的権威を保持する天皇を象徴的元首として規定した。天皇が実質的権能を有しない(第七条)ことは、第二章の天皇の章において、現行憲法を踏襲する形で明示した。

国民主権の章を第一章に
 国民に主権が存することを強調するため、国民主権の章を新たに策定し、第一章とした。また、主権行使の実質化を図るため、主権者としての選挙の責務を国民に課す(第三条)一方で、政党に対し国民の政治的意思形成に協力する義務(第四条)を、国に対しては国民への情報開示による説明責任(第五条)を規定した。

自衛隊を防衛軍に
 現行第九条第一項の戦争放棄の規定は現状のままとし、平和の理念を尊重するとともに、その第二項において自衛のための防衛軍を位置づけた。また、第三項では国際平和、人道支援等のため、国連や国際協調の枠組みの下での活動に防衛軍が参加することを認め、第四項でその際の武力行使についても、国会承認のもとに行えることを明記した。(第十一条)

他者の権利尊重や外国人の人権保障を明記
 基本的人権は生来の権利としてすべての人に存することを確認し、外国人に対しても権利が保障されることを明文化した(第十三条)。また、昨今の行き過ぎた利己主義を反省し、本来の個人主義を目指し、自己の権利と同様に、他者の権利の尊重も必要という相互性を明示すること(第十四条)で、個人の権利の濫用禁止という現行憲法規定を強化した。

政教分離規定を実質的に
 地鎮祭等についての判例の立場も踏まえつつ、宗教的活動であっても一律に禁止されるわけではなく、社会的儀礼や習俗的行事とされる行為等合憲とされる範囲があることを明文化した。(第十九条)

家庭の条項を規定
 家庭を社会を構成する基本的な単位と位置づけるとともに、家族相互の責務、国による保護義務を規定した。(第二十八条)

新しい人権を規定
新しい人権として人格権(第二十三条)、環境権(第三十条)、創造活動の自由及び知的財産権の保護(第二十二条)を規定し、さらに国民に国の平和と独立を守る責務(第三十五条)を認めた。

衆議院の優位性と参議院の独自性
二院制のもとで、首相選出(第七十五条)や法案の可決権(第六十六条)において衆議院の優位性をさらに拡充し、それとあわせて衆議院議員についてのみ直接選挙を規定した(第五十四条)。参議院については政治的安定性を前提に、行政府に対する一定の人事権を行使するもの(第六十九条)とした。

国会による行政監視機能の強化
 首相権限へのチェック機能を高めるため、国政調査権の内容を拡充し、特に少数野党主導の調査を可能とするため、少数派調査権を導入した。(第七十条)

衆議院選挙を利用した実質的首相公選制へ
 衆議院選挙の際、政党に首相候補の明示を義務付けることで、衆議院選挙を実質上首相選出のための選挙として位置づけた(第七十四条)。その結果、衆議院での内閣総理大臣指名にあたって、過半数を得られない場合に備え、相対多数による首相選出も可能とした(第七十五条)。

首相のリーダーシップの強化
 実質的な首相公選制を背景に、行政権を首相専属とした(第七十三条)。首相は従来どおり各大臣の任免権を有し(第七十八条)、また、独立した決定権を有する結果、行政内部での対立については従来の合議体制から首相裁断による決定が可能となる。また、首相が提出した法案について国会と対立した場合には国民投票に付すことを可能とし、その信任を得た場合には法案を成立させることができるものとした(第八十四条)。

緊急事態条項の新設
 国防、テロ、大規模自然災害等の緊急事態に対応して、内閣総理大臣への一時的権力集中(第八十七条)、基本的人権の制約(第八十九条)等憲法条項の一時的停止を可能とするとともに、当該条項が濫用されないよう、国会による事前あるいは事後的統制を規定した(第八十八条)。

憲法裁判所の創設
 違憲審査権の終審裁判所として従来の最高裁とは別に憲法裁判所を創設した(第九十一条)。裁判官は国会と内閣総理大臣で半数ずつ任命し民主的正統性を得るとともに、再任なしとすることで選任者の政治的影響力を排除した(第九十四条)。判断内容としては、法律上の争訟を前提とした具体的審査権に加え、国会や内閣総理大臣によって提起された場合には事件性がなくとも違憲性を審査できる抽象的審査権を含むものとし、さらに訴訟当事者からの提訴も最高裁の確定後に限定して可能とした(第九十二条)。

健全な財政の維持を規定
 財政の章については、健全な財政原則をうたう(第百一条)とともに、従来の問題指摘を踏まえ、継続費を認め(第百三条)、私学助成の禁止(第百六条)の条項を修正した。

地方自治の原則を宣言
 従来、あいまいと指摘されてきた「地方自治の本旨」を団体自治と住民自治と明記し(第百九条)、地方自治の原則を憲法上宣言。地方自治を実質化するため、課税自主権を明記した(第百十一条)。道州制については、憲法上は規定しない。

憲法改正手続きの簡素化
 憲法制定権力を保持する国民主権の立場から国民投票は必須事項のままとするが、国会における発議権を現行の総議員の2/3以上の賛成から過半数による賛成に変更した。(第百十三条)

憲法が条約にも優位する最高法規性の明記
 国際条約の遵守義務を規定する一方で、憲法と条約の間での憲法の上位性を明定する。(第百十四条)




平和研憲法試案
(下線は、現行憲法からの改正部分)

    前文
 我ら日本国民はアジアの東、太平洋の波洗う美しい北東アジアの島々に歴代相承け、天皇を国民統合の象徴として戴き、独自の文化と固有の民族生活を形成し発展してきた。
 我らは今や、長い歴史の経験のうえに、新しい国家の体制を整え、自主独立を維持し、人類共生の理想を実現する。
 我が日本国は、国民が主権を有する民主主義国家であり、国政は国民の信頼に基づき国民の代表者が担当し、その成果は国民が享受する。
 我らは自由・民主・人権・平和の尊重を基本に、国の体制を堅持する。
 我らは国際社会において、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、その実現に貢献する。
 我らは自由かつ公正で活力ある日本社会の発展と国民福祉の増進に努め、教育を重視するとともに、自然との共生を図り、地球環境の保全に力を尽くす。
 また世界に調和と連帯をもたらす文化の重要性を認識し、自国の文化とともに世界文化の創成に積極的に寄与する。
 我ら日本国民は、大日本帝国憲法及び日本国憲法の果たした歴史的意義を想起しつつ、ここに新時代の日本国の根本規範として、我ら国民の名において、この憲法を制定する。

(天皇の地位)
第一条 天皇は、国民に主権の存する日本国の元首であり、国民統合の象徴である。

    第一章 国民主権
(国民主権、主権の行使方法)
第二条 日本国の主権は国民に存し、国民は国会における代表者及び国民投票によって主権を行使する。
(選挙)
第三条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利であり、責務である。
2 公務員の選挙については、成年者による普通選挙、自由選挙及び秘密選挙並びに投票価値の平等を保障する。
3 選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。
(政党)
第四条 国民は、自由に政党を結成することができる。
2 政党は、国民主権の原理を尊重するとともに、国民の政治的意思形成に協力し、民主政治の発展に努めなければならない。

(国の説明責任)
第五条 国は、国民の主権の行使に資するため、法律の定めるところにより、国務に係る情報の開示を行い、国民に対して説明責任を果たさなければならない。

第二章 天皇
(皇室典範)
第六条 皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
(天皇の権能)
第七条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
3 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣総理大臣の助言と承認を必要とし、内閣総理大臣がその責任を負う。
(摂政)
第八条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行う。この場合には、前条第一項の規定を準用する。
(天皇の任命権)
第九条 天皇は、衆議院の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、国会の指名に基づいて、憲法裁判所の長たる裁判官を任命する。
3 天皇は、内閣総理大臣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
(天皇の国事行為)
第十条 天皇は、内閣総理大臣の助言と承認により、国民のために、次の国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会召集の詔書を発すること。
三 衆議院の解散詔書を発すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。

   第三章 安全保障及び国際協力
(戦争放棄、安全保障、防衛軍、国際平和等の活動への参加、文民統制)
第十一条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久に認めない
2 日本国は、自らの平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため、防衛軍をもつ。
3 日本国は、国際の平和及び安全の維持、並びに人道上の支援のため、国際機関及び国際協調の枠組みの下での活動に、防衛軍を参加させることができる。
4 防衛軍の指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。防衛軍に武力の行使を伴う活動を命ずる場合には、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得なければならない。


   第四章 国民の権利及び義務
(国民の要件)
第十二条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
(基本的人権)
第十三条 何人も、生来の権利として、すべての基本的人権を享有する。この憲法が保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。
2 前項の権利は、権利の性質上制約されるものを除き、外国人に対してもひとしく保障される。
(自由及び権利)
第十四条 この憲法が保障する自由及び権利は、各人の不断の努力によって保持するとともに、これを濫用してはならない。
2 何人も、相互に自由及び権利を尊重しなければならない。
(個人の尊重及び生命、自由、幸福追求権)
第十五条 すべては、個人として尊重される。生命、自由及び幸福を追求する権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他の国政の上で、最も尊重されなければならない。
(法の下の平等)
第十六条  すべては、法の下に平等であって、人種、信条、性別、住所又は社会的身分により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄誉、勲章その他の栄典の内容は法律でこれを定める。
4 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
(公務員の本質)
第十七条 すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。常に公務員は、この憲法が保障する自由及び権利の実現に努めなければならない。
(思想及び良心の自由)
第十八条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
(信教の自由、公的支出の禁止)
第十九条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、特定の宗教を援助、助長若しくは促進又は圧迫若しくは干渉となるような宗教的活動をしてはならない。
(表現の自由)
第二十条 言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲はしてはならない。
3 通信の秘密は、これを侵してはならない。
(集会、結社の自由)
第二十一条 集会、結社の自由は、これを保障する。
(学問の自由、創造活動の自由)
第二十二条 学問の自由は、これを保障する。
2 芸術、学術、科学技術及びその他の創造活動の自由は、これを保障する。知的財産権は法律の定めるところにより保護される。
(人格権)
第二十三条 何人も、自己の名誉、信用その他の人格を不当に侵害されない。
2 何人も、自己の私事及び家庭にみだりに干渉されず、また第三者に公開されない権利を有する。

(苦役からの自由)
第二十四条 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
(居住及び移転の自由)
第二十五条 何人も、居住及び移転の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
(職業選択及び営業の自由)
第二十六条 何人も、公共の利益に反しない限り、職業選択及び営業の自由を有する。
(財産権)
第二十七条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
(家庭、家族関係における個人の尊厳と両性の平等)
第二十八条 家庭は社会を構成する基本的な単位である。何人も、各自、その属する家族の維持及び形成に努めなければならない。
2 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚するものであり、国家はこれを保護する。
4 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
(生存権、国の努力義務)
第二十九条 何人も、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
(環境権)
第三十条 何人も、良好な環境を享受する権利を有し、その保全に努める義務を負う。
2 国は、良好な環境の保全に努めなければならない。
(教育を受ける権利)
第三十一条 何人も、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 何人も、法律の定めるところにより、その保護する子どもに普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。
(勤労の権利及び義務)
第三十二条 何人も、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
(労働者の団結権)
第三十三条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
(納税の義務)
第三十四条 何人も、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。
(平和と独立を守る責務)
第三十五条 すべて国民は、国の平和と独立を守る責務を負う。
(法定手続きの保障)
第三十六条 何人も、適正な法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰及び行政処分を科せられない。
(裁判を受ける権利)
第三十七条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を保障される
(逮捕の要件)
第三十八条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する裁判官が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
(留置又は勾留の要件)
第三十九条 何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、留置又は勾留されない。また、何人も、正当な理由がなければ、勾留されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
(住居の不可侵)
第四十条 何人も、第三十八条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることはない。
2 捜索又は押収は、権限を有する裁判官が発する各別の令状により、行わなければならない。
(拷問及び残虐刑の禁止)
第四十一条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は禁ずる。
(刑事被告人等の権利)
第四十二条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人及び勾留された被疑者は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを付する。
(刑事被告人の権利)
第四十三条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く留置若しくは勾留された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
(遡及処罰の禁止、一事不再理)
第四十四条 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
(刑事補償請求権)
第四十五条 何人も、留置又は勾留された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
(請願権)
第四十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
(国家賠償請求権)
第四十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

   第五章 国会
(立法権)
第四十八条 立法権は国会に属する。
(両院制)
第四十九条 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。
(両議院の組織)
第五十条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律で定める。
(議員及び選挙人の資格)
第五十一条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。ただし、人種、信条、性別、住所、社会的身分、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
(衆議院議員の任期)
第五十二条 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
(参議院議員の任期)
第五十三条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
(選挙に関する事項)
第五十四条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。ただし、衆議院議員は、国民が直接選挙しなければならない。
(両議院議員の兼職の禁止)
第五十五条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
(議員の歳費)
第五十六条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
(議員の不逮捕特権)
第五十七条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中釈放しなければならない。
(議員の発言及び表決の無責任)
第五十八条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
(常会)
第五十九条 国会の常会は、毎年一回召集する。
(臨時会)
第六十条 内閣総理大臣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣総理大臣は、その召集を決定しなければならない。
(衆議院の解散、特別会、参議院の緊急集会)
第六十一条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣総理大臣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。
(資格争訟の裁判)
第六十二条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
(定足数、表決)
第六十三条 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の規定のある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(会議の公開、秘密会、会議の記録)
第六十四条 両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は会議録に記載しなければならない。
(役員の選任、議員規則)
第六十五条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続き及び内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
(法律案の議決、衆議院の優越)
第六十六条 法律案は、この憲法に特別の規定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 第二項の規定による衆議院の再議決は、参議院の議決後、国会休会中の期間を除いて六十日を経なければならない。
5 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
(衆議院の予算案先議、衆議院の優越)
第六十七条 予算案は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
(条約の承認、衆議院の優越)
第六十八条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
(公務員の任命への同意)
第六十九条 法律で定める重要な公務員の任命については、参議院の同意を得なければならない。
(国政調査権)
第七十条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。この調査は、各々その総議員の十分の一以上の賛成があるときには、行わなければならない。
2 両議院は、前項の調査を行った場合には、その結果の記録を保存し、特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表しなければならない。

(閣僚の議会での答弁の義務と議会出席の権利)
第七十一条 両議院は、内閣総理大臣及び国務大臣に対して、答弁又は説明のため出席を求めることができる。内閣総理大臣及び国務大臣は出席を求められたときは、議院に出席しなければならない。
2 また、内閣総理大臣及び国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案の内容及びその取り扱いについて発言するため議院に出席することができる。

(弾劾裁判所、訴追委員会)
第七十二条 参議院に、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、参議院議員で構成される弾劾裁判所を設ける。
2 衆議院に、前項の訴追のため、衆議院議員で構成される訴追委員会を置く。
3 訴追及び弾劾に関する事項は、法律で定める。
 
第六章 内閣総理大臣
(行政権、国会への責任)
第七十三条 行政権は、内閣総理大臣に属する。
2 内閣総理大臣は、行政権の行使について、国会に対し責任を負う。
(内閣総理大臣の推挙)
第七十四条 総選挙は、衆議院議員選出と内閣総理大臣推挙のために行われる。
2 政党は、総選挙に際し、内閣総理大臣候補を明示しなければならない。

(内閣総理大臣の指名)
第七十五条 内閣総理大臣は、衆議院議員の中から衆議院の議決で指名する。この指名は、他のすべての案件に先立って行う。
2 前項の指名にあたって、過半数の得票者のない場合には、投票の最多数を得た者二人につき、更に投票を行い、多数の得票を得た者を指名することとする。
(内閣総理大臣の解散権、内閣総理大臣不信任決議)
第七十六条 内閣総理大臣は、衆議院を解散することができる。
2 内閣総理大臣は、衆議院で不信任の決議案が可決され、又は信任の決議案が否決されたときは、衆議院を解散しなければならない。
(内閣の構成)
第七十七条 内閣は、法律の定めるところにより、内閣総理大臣及びこれを補佐する国務大臣で構成される。
2 内閣総理大臣及び国務大臣は、文民でなければならない。
(国務大臣の任命及び罷免)
第七十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。ただし、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、国務大臣を罷免することができる。
(内閣の総辞職)
第七十九条 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
2 前項の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続き憲法の定める職務を行う。
(内閣総理大臣の臨時代理)
第八十条 内閣総理大臣に事故あるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が内閣総理大臣の職務を行う。
(内閣総理大臣の職務権限)
第八十一条 内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本方針を定め、これについて責任を負う。
2 内閣総理大臣は、法律案、予算案その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督する。
(国務大臣の職務権限)
第八十二条 国務大臣は、法律の定めるところにより、主任の大臣として行政事務を分担管理する。
2 国務大臣は、内閣総理大臣が定めた基本方針に基づき、自らの責任において、自己の分担する行政事務を行う。

(内閣総理大臣の職務)
第八十三条 内閣総理大臣は、国務大臣の補佐を受けて、他の一般行政事務のほか、次の事務を行う。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を得ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従い、公務員に関する事務を掌理すること。
五 予算案を作成すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
(国民投票)
第八十四条 内閣総理大臣は、自ら提出した法律案について、国民投票に付託することができる。
2 前項の場合には、それに先だって、両議院において、各々その総議員の三分の一以上の同意を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、国民投票の結果を国会に説明する義務を負う。
4 国会は、法律案が国民投票に付された場合には、その結果にしたがわなければならない。
5 国民投票に関する事項は、法律で定める。

(法律及び政令への署名)
第八十五条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
(国務大臣の特権)
第八十六条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。ただし、これにより、訴追の権利は、害されない。
(緊急事態の宣言、指揮監督権)
第八十七条 内閣総理大臣は、国の独立と安全又は多数の国民の生命、身体若しくは財産が侵害され、又は侵害される恐れがある事態が発生し、その事態が重大で緊急に対処する必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、全国又は一部地域について、緊急事態の宣言を発することができる。
2 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、法律に基づき、防衛軍のほか、警察、海上保安、消防その他の行政機関を統制するとともに、地方公共団体の長を直接指示することができる。
(国会承認と宣言の解除)
第八十八条 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発したときは、二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。衆議院が解散されているときは、緊急集会による参議院の承認を求めなければならない。
2 内閣総理大臣は、国会が緊急事態の宣言を承認しなかったとき、又は宣言の必要がなくなったときは、すみやかに宣言を解除しなければならない。
(緊急措置、基本的人権の尊重、公正な手続き)
第八十九条 内閣総理大臣は、緊急事態の宣言を発した場合には、国民の生命、身体又は財産を守るために必要最小限のものと法律が認める範囲内で、この憲法が保障する自由及び権利を制限する緊急の措置をとることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の措置をとる場合には、基本的人権を尊重しなければならない。
3 第一項の措置は、公正かつ適正な手続きの下に行われるものとし、その実施に係る国民の権利利益の救済に係る手続きについても、迅速に処理されなければならない。


第七章 裁判所
(司法権、特別裁判所の禁止、裁判官の職務上の独立)
第九十条 すべて司法権は、憲法裁判所、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
(憲法裁判所の違憲審査権)
第九十一条 憲法裁判所は、一切の条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
(憲法裁判所の管轄)
第九十二条 憲法裁判所は、次の事項を管轄する。
一 条約、法律、命令、規則又は処分について、内閣又はいずれかの議院の総議員の三分の一以上の申し立てがあった場合に、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
二 具体的訴訟事件で、最高裁判所又は下級裁判所が求める事項について、法律の定めるところにより、憲法に適合するかしないかを審判すること。
三 具体的訴訟事件の当事者が最高裁判所の憲法判断に異議がある場合に、法律の定めるところにより、その異議の申し立てについて、審判すること。

(憲法裁判所の違憲判断の効力)
第九十三条 憲法裁判所が、条約、法律、命令、規則又は処分について、憲法に適合しないと決定した場合には、その決定は、それ以降、国及び地方公共団体を拘束する。
(憲法裁判所の裁判官、任期、報酬)
第九十四条 憲法裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、半数ずつ、国会及び内閣総理大臣が任命する。
2 憲法裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されない。
3 憲法裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

(最高裁判所の裁判官、任期、報酬)
第九十五条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣総理大臣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。
3 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
(下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬)
第九十六条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣総理大臣が任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時に退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
(最高裁判所、憲法裁判所の規則制定権)
第九十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続き、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 前項のうち、憲法裁判所に関する事項については、憲法裁判所がその規則を定める権限を有する。
3 検察官は、憲法裁判所及び最高裁判所が定める規則に従わなければならない。
4 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
(裁判官の身分保障)
第九十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことはできない。
(裁判の公開)
第九十九条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第四章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。

   第八章 財政
(財政処理の基本原則)
第百条 国の財政は、国会の議決に基づいて、内閣総理大臣が処理する。
2 国は、健全な財政の維持及び運営に努めなければならない。

(課税)
第百一条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
(国費の支出及び国の債務処理)
第百二条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
(予算案、継続費)
第百三条 内閣総理大臣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
2 特別に継続支出の必要があるときは、年限を定め、継続費として国会の議決を経なければならない。
(予備費)
第百四条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣総理大臣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣総理大臣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
(皇室財産)
第百五条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。
(公の財産の用途制限)
第百六条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業であって、法律で定めるものに対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(決算検査、会計検査院)
第百七条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣総理大臣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
(財政状況の報告)
第百八条 内閣総理大臣は、国会及び国民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。

第九章 地方自治
(地方自治の基本原則)
第百九条 地方自治は、地方公共団体及びその住民が、地域における住民の日常生活に密接な関連性を有する事務を、自らの意思及び責任において行うことを原則とする。 
2 地方公共団体の組織、権能及び運営に関する事項は、前項の原則を尊重し、法律でこれを定める。
(地方議会、長・議員等の直接選挙)
第百十条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の公務員は、その地方公共団体の住民が、直接選挙する。
(地方公共団体の権能、条例制定権、課税権)
第百十一条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の趣旨の範囲内で条例を制定することができる。
2 地方公共団体は自らの権能の実施のために、条例により租税を課すことができる。また、その財政は健全に維持及び運営されなければならない。
(特別法の住民投票)
第百十二条 特定の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
    
第十章 改正  
(改正の手続き及び交付)
第百十三条 この憲法の改正は、各議院の総議員の過半数の賛成で、国会が発議し、国民に提案してその承認をなければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を得たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
   
第十一章  最高法規
(憲法の最高性)
第百十四条 この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する条約、法律、命令及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
(国際法規の遵守)
第百十五条 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
(憲法尊重擁護義務)
第百十六条 天皇又は摂政及び内閣総理大臣、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。 



    憲法改正試案